時代の要請により保育園の鬼のあり方も変わってきている。
「鬼に金棒」「鬼の目にも涙」などのことわざから「鬼教官」まで、鬼にまつわる日本語は枚挙にいとまがない。令和の世に一大ブームを巻き起こしているあの大人気コミックも「鬼退治」の話だ。こんなに愛されている存在にもかかわらず、最近の保育園では「怖がらせない」が一つのキーワードになっている。
その中で相変わらず節分には鬼が登場する保育園での鬼歴20年を超えた「赤鬼」から見えた世界をお伝えしたいと思います。
こんなバケモノが目の前に現れたら、子どもたちからみたら迷惑でしかありません。
この鬼が登場した時、子どもたちはどのような行動に出るか皆さんは想像できますか?
恐怖映画のシーンのように悲鳴を上げて鬼から逃げ回る姿をイメージするかもしれませんが、実際の子どもたちの姿といえばどうなるかといえば・・・子どもたちは、担任の保育士にピタッとくっつき離れない…そんな行動をとります。
そう、信頼を置いている職員の安全、安心の輪の中に入ろうとするのです。
子どもたちは、不安や嫌なことがあるとき大好きな保護者や保育士がいるコンフォートゾーンへと戻ってくることで精神的にも肉体的にも身を守るっているのが鬼の目から見るとよくわかります。
勇気を出して鬼の背後から鬼退治をしようとする子どもだって、豆をぶつけるとすぐに保育士の後ろに隠れ、また目が合うとスーッと保育士の後ろに隠れ次のチャンスをうかがっているのが面白いくらいに見えてくる。
ちゃんと自分の安心安全の輪を理解しながら、鬼たちとかかわろうとしているのが良くわかります。
やがて、鬼は退治され、弱ってくると子どもたちは、鬼たちと目を合わせ、保育士の腕の中から手を伸ばし握手やハイタッチを求めてくる。
そして、「おにさん、またらいねんもあそびにきてね」と優しい言葉をかけてくれたり・・・さっきまで泣き叫んでいた子どもが「おれって強いでしょ!」と膝の上に座ってきたり・・・
トラウマにもならず、鬼ごっこができるのもアタッチメントのお陰なのだと思います。
逆に子どもを驚かすために、怖がる子どもを鬼に差し出して面白がるような保育士がいるようであれば、それは不適切な対応です。
鬼は来訪神ではないのかもしれないが、保育園で節分という行事を伝承していくためにも意味や意義を再確認してみても良いのかもしれない。