時枝俊江さんという女性監督が撮った1970年~80年代の保育の記録映画が観られるということで宝町にある国立映画アーカイブに行ってきました。
日本で唯一の国立映画専門機関のようでスクリーンは小ぶりですが綺麗な映画館で300人くらいが収容できるちょうどよいサイズ感。それに値段がなんと520円!!
しかし40年以上前の保育の記録映画など見る人はいるのだろうかと思っていたら、なんと50名以上の観客が。
時枝俊江さんという映画監督の名前も知りませんでしたが、保育という営みをどのように映したらよいのかというチャレンジがみられ実に面白かった。
最初の作品「学級集団の成長」は撮影と同時に録音し、ナレーションなど入れずに事実をそのまま伝えるダイレクトシネマ的な手法で撮影した東京の区立幼稚園の一週間を保育士の視点とのぼるくんという男の子主軸にしたドキュメンタリーであったり、ナレーションなどを一切廃し、現場の生の声や音と映像だけで撮影した「光った水を取ろうよ」では子どもの好奇心を観る側にも体感してもらいたいという意図が感じられるような記録映画になっていた。
0年8代に入ってからの作品は幼児の主体的な成長をケース・スタディ的に表現しているものが多く、ナレーションの代わりに時枝監督と現場の園長(保育士?)との 対話形式による解説音声を付け、集団行動になじめない発達障害(この当時はそういった分類もなかったのだと思われます)の子どもたち行動から子どものニーズをどのように捉えたらよいかというやり取りが実にリアルで興味深かった。
そのほかにも砂場を工事現場に見立て遊ぶ5歳児の活動と当時はやっていたというう自己充実という概念を考察したり、箱積み木や独楽を使いながら数量の概念を体得していく幼児教育の特性などを表現した作品などは2024年に観てもなかなか面白い。
時枝監督という人がどの程度、保育に精通していたかはわかりませんが、子どもの声をしっかりと拾うこと、そして、声を出していない「没頭して活動」している子どもにもちゃんと着目している視点などは素晴らしいなあと感心してしまう。
また、幼児教育にかかわる映像を撮り続ける中で自由保育という理念的な話と実際の主体的な子どもの姿の違いなども見つけ出そうと試みていたのではないかと感じる場面などもあり、自分が撮影者(編集者)であったら、このように表現したのに・・・という視点で映画を楽しみました。
観終わった感想としては映像に記録は大切だということ。ここ数年、一時期よりも写真や動画の映像を残し人に伝える作業が疎かになっていることを反省し、来年度はそのあたりもしっかりやっていきながら保育の質を高めていきたいと感じました。