約60年間地元弘明寺の床屋に通い続けていた僕がここ数年は屏風ヶ浦にある美容室「TRIPLE-ef」で髪を切ってもらっている。店主の中島翔さんのカットの技術や知識を信頼しているという理由もあるが、僕にとっては単なる“髪を切る場所”ではなくなっている。
はじめは中島さんが向き合っている美容だけでなく、社会課題に対しても活動している面白い人くらいの感覚で見ていましたが、最近は、保育・福祉とは遠い世界のような美容の世界にこれからの保育所運営にとって極めて重要なヒントや共通項を感じ楽しいので自分なりに整理してみた。
① サービスではなく「関係の営み」としての仕事
TRIPLE-efは、技術を提供するだけ店ではなく、関係が積み重なっていく場なのだ。
保育所も同じ。「預かる」「育てる」という機能ではなく、子ども・保護者・保育者の時間が重なり、人生のリズムが整えられていく場所であって保育の価値は、目に見える成果でだけはなく、関係の質に宿るという共通項がある。
② 理念は掲げるものではなく、判断を支えるもの
また、中島さんの経営で印象的なのは、理念が日常の判断に生きていることです。
保育でも同様に、「この声かけでいいのか」「この環境でいいのか」という迷いの場面で、理念が“答えの方向”を示してくれるかどうかが問われます。理念は装飾ではなく、現場を支える判断装置として機能しているのが実に良い。
③ スタッフの人生を預かる覚悟
美容師も保育士も、人生の大半を仕事に費やします。だからこそ、「ここで働いた時間を、その人は誇れるだろうか」という問いは重いものになる。離職率は個人の問題ではなく、経営の結果、人が辞めない職場は、人を大切にしている“空気”がを感じるのです。
④ 社会課題を事業の外に置かない
また、孤立、貧困、育てにくさ、不安定な暮らし、活気がなくなっていく街・・・
中島さんはそれらを特別なこととして切り離さず、日常の営みに編み込んでいます。
保育所もまた、社会課題の最前線にある場、だからこそ、特別対応ではなく、日常の保育設計そのものが答えにしていかなければならないのだ。
⑤ 価格ではなく「意味」で選ばれる場へ
近いから、便利だから、安いから・・・そうした理由だけでは、もう選ばれません。
今日は価格設定に関してのお話を聞かせてもらった「なぜ、ここなのか」・・・その問いに答えられる思想や物語がある場所だけが、これから先も人に選ばれていくのだろう。
⑥ 専門性をひらく勇気
TRIPLE-efは、専門性を囲い込まず、とてもオープン。語り、見せ、共有することで、理解者を増やしていく。
保育も同じです。専門性を閉じると孤立し、ひらくと応援が生まれる。地域との関係性は、そこから育つのではないかと実感させてもらえる。
⑦ 管理者ではなく、編集者
中島さんはすべてをコントロールしていない。人の想い、地域の課題、場の力を編み直し、一つの世界観をつくっていく。これは僕も大切にしている概念で、管理ではなく編集。秩序ではなく、意味を生み出す・・・そんなことを髪を切ってもらいながら考えていました。
美容室と保育所。扱う対象は違っても、「人の人生の節目に立ち会う仕事」という本質は同じです。中島翔さんのスタンスや姿勢は、保育所経営に活かすエッセンスが詰まった美容室なのです。