秘匿性の高い福祉事業を展開してきた我々のような社会福祉法人が、地域に向かって舵を切ることは簡単なことではない。プライバシーを守ることは、信頼を守ることだし、一方、社会に開くことは、未来を守ることでもある。この二つは、しばしば緊張関係にある。けれども、4年前から始まった我が久良岐母子福祉会地域福祉戦略会議の歩みは、その緊張を対立ではなく新たな可能性として実を結びつつある。
昨日は地域福祉実践報告会。くらき永田保育園は職員の個性を活かしたTOY活の浸透、データの蓄積、ボランティアの組織化とその効果、地域のお祭りへの参画、550名以上が集まった「こどもまんなかテラス」、そして「農家ファーストのレシピ」。どれも、地域福祉を“事業”ではなく“関係”として再設計している実践を浅野先生と鹿城先生が見事に表現してくれた。
しかし、何より僕の胸を打ったのは、母子生活支援施設の報告でした。入居者のプライバシーを守るという絶対条件の中で、ステークホルダーが1年で58名から116名へ・・・それは単なる“関係人口”の増加ではなく、一緒に汗を流す「活動人口」の増加でした。また、寄付をしてくれた人と、寄付を受ける人。支援する側と、支援される側。この二項対立を超えて、周年イベントを共につくり、顔の見える関係が続いていくその物語は“支援”ではなく“循環”といえるような実践報告だった。返報性の法則が目に見えるようになるとき、人は「施す側」ではなく、「関わる側」になります。そして入居者の自立支援は、孤立からの脱出ではなく、関係の中での再出発へと質を変えていく可能性も見えてきています。

社会福祉法人は、ときに誤解されます。閉じている。特殊だ。税制優遇のある存在だなどなど。しかし本質は違う。秘匿性とは、「守る責任」を引き受ける覚悟のことだから、その覚悟があるからこそ、地域に対しても誠実でいられるのだ。守る力と、開く力、この両方を持てることこそ、これからの社会福祉法人の特性になっていくのだろう。
少子高齢化、孤立、貧困、分断、行政だけでは解決できない課題が山積する中で、
社会福祉法人は「人と人の間」に立てる存在だと思っています。制度の中に立ちながら、暮らしの現場に触れている。だからこそできることがある。久良岐母子福祉会の実践は、福祉が“困った人を助ける仕組み”から、“共に社会をつくる装置”へ進化していることを示しているように思えた。
ひとつひとつの実践は決して派手ではありません。でも、確実に広がり、活動人口が増え、関係が深まり、自立が孤立ではなくなる。この静かな革命を次年度も少しでも前進させていきたい。それが、社会そのものを耕す営みなのだから。

